腸壁を削って美味い物を食す

元潰瘍性大腸炎(軽症)患者であった筆者(現在は完治済)が、症状が再燃するリスクを覚悟してでも食べたいと思うほど美味しかった逸品(主に麺類)を紹介していくブログです。不定期更新ですが、地道に書き進めていきます。よろしくおねがいします。

666. 白鷺に紅の羽~探偵・癸生川凌介事件譚vol.4:怒涛の複線回収!ついに明かされる探偵助手・白鷺洲伊綱の壮絶な過去!

4月から3か月連続で紹介してきた、

探偵・癸生川凌介事件譚シリーズ

 

2005年ごろに人気を博した携帯ゲームが、

ニンテンドースイッチダウンロードソフトとして、

リメイクされて発売されるという、

個人的には超絶嬉しい神企画である。

 

それも、なんと今回で4作目のリメイク。

 

※1作目の紹介記事

kenshinkk.hatenablog.com

 

※2作目の紹介記事 

kenshinkk.hatenablog.com

 

※3作目の紹介記事

kenshinkk.hatenablog.com

 

中学生~高校生のときに夢中になったゲーム

十数年ぶりに遊べているだけでも感動なのだが、

今回紹介する4作目

白鷺にの羽

については、

個人的にひときわ思い入れが強い

 

当時、小説というものがあまり好きではなかった自分にとって、

練りに練られたストーリーの面白さ

鮮やかな伏線回収が決まったときのカタルシス

心がひき込まれる物語性初めて実感した作品だった。

 

これまで3作品では、

主人公であるシナリオライター生王が、

探偵助手白鷺州伊綱と共に、

事件を調査・推理し、

犯人を追い詰めていき、

探偵・癸生川凌介が種明かしする、

というパターンが定番であった。

 

いずれもクオリティが高く、

ミステリーとしての純粋な面白さがあった。

 

ただ、今回は、趣向が異なり、

その3作品で、主人公のパートナーであった、

探偵助手・白鷺洲伊綱に焦点が当てられ、

彼女がどんな紆余曲折を経て、

探偵を志すことになったのかが判る作品となっている。

 

物語の舞台は5年前

そして、本作の主人公は、

記憶喪失になった「楓」という女性。(楓は仮名)

当時、高校3年生の伊綱とともに、

自分が何者なのかを調査していくが、

事件に巻き込まれていき…

というストーリー。

 

その物語の切なさ、そして完成度の高さから、

4作目にしてシリーズ最高傑作との呼び声も高く、

自分も単にストーリーだけで言えば、

最も心を動かされた作品として、

この白鷺にの羽を推したい。

そういった、作品なのである。

 

そういうわけで、

前置きが大変長くなってしまったことは、

お許しを頂きたいわけであるが、

物語の性質上、

いきなりネタバレ全開での紹介となるので、

ここまでの紹介で、内容が気になった方は、

ぜひ、500円でダウンロードしていただければと思う。

 

 

 

(ネタバレ回避スクロール)

 

 

 

 

・タイトル

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の文字だけがしっかり紅色をしており、

湖の上に楓の葉が浮かんでいるという、

最高のタイトルバックである。

この先のストーリーを知っていると、

このタイトルだけでも泣ける。

 

・序章

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A県に向かう電車の中、

法事で一時的に故郷に戻る白鷺洲伊綱と、

たまたま同じ県に取材に行く矢口床子

(※矢口床子=第2作で初登場したジャーナリスト、準レギュラー)

という状況から物語が始まる。

 

今思うと、A県はものすごく富山っぽい。

紅葉赤い座席、そして製薬で栄えた県という設定、

仮にそうだとしたら、再限度がものすごく高い。

 

そんなことを思いながら、

ゆったりしたBGMがかかる中、

矢口と伊綱の世間話が淡々と進んでいく。

 

そんな中、矢口が、

「伊綱ちゃんは結婚したいとかそういう夢は無いの?」

と話題を切り出した瞬間、空気が一変する。

 

伊綱が次のセリフを放ち、急にBGMが止まるのである。

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いやー、このBGMが止まる演出が最高過ぎる。

この瞬間の鳥肌たるや、すさまじかった。

 

まだ20代前半っぽい女性キャラクターが、

まさかの既婚者???

 

初回プレイ時は、中学生にして、

頭が真っ白になったのを覚えている。

 

しかも、伊綱さん、

え?言ってませんでしたっけ?

的なノリで飄々としているのだから、強い。

 

指輪は金属の固まりのようになっており、

つけられないので持ち歩いているそう。

 

そうなった経緯を話し始めたところで・・・場面転換。

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駅に向かうまでの間、

伊綱は矢口にすべて話したようであり、

駅に着くと、矢口は話のあまりの壮絶さに驚いている。

 

なるほど、ここで伊綱から矢口に語られた話が本編なのか。

という予想がつくが、非常に期待感を煽る演出になっている。

 

目的地の百白駅に着き、

村の方に進んでいくと、

一人の女性が現れる。

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この女性、伊綱と面識があるらしい。

伊綱がこの女性を矢口に紹介するシーンがこちら。

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この「か・・・」は、

まぎれもなく「楓」「か」なわけで、

ストーリーを一度最後まで進めた人ならば、

ここだけでも、泣ける。

というか、序章がクライマックスすぎる。

 

藤沢珠恵さん、どうやら5年前以来の再会だったようで、

伊綱に名前を尋ねる。

白鷺洲だと聞くと、

「なら、1年間幸せにすごせましたか?」

とのこと。

 

初回プレイ時は、

この会話がどうつながるのか、

全く予想がつかなかったが、

この1年間に大きな意味があったのである。

 

そして、

「本当に綺麗な紅葉ですね。あの時と変わらない・・・」

という昔を懐かしむ珠恵さんのセリフと共に、

白鷺に紅の羽メインテーマBGMとして流れ始める。

 

このメインテーマが正直いって神BGMすぎて、

聞くたびに涙が溢れそうになるくらいの名曲なので、

ぜひ物語とともに味わっていただきたい。

 

その名曲が流れる中、

シーンは進み、珠恵が近況を語りだす・・・

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結婚して妊娠しているらしいが、

「この年で初婚」というセリフからして、

珠恵さんはそれなりの年齢だとわかる。

 

そして、

珠恵「あやかって伊綱って名前にしちゃおうかな・・・」

伊綱「私みたいな娘なんて・・・」

珠恵「娘なんて?」

というやりとり。

わかる人だけにはわかる号泣ポイントである。

 

初回は、単に伊綱が優秀なのを知ってて・・・、

くらいに思っていたのだが、

想像を絶するほどの深い意味があり、驚いた。

(その内容については、後述する)

 

そして、珠恵さんとの再会を果たした伊綱は、

再び矢口と合流しようとするところで、

ふたたび、オープニングのナレーション(地の文)へ。

 

BGMのメインテーマがサビの盛り上がりにさしかかり、

伊綱の心情が巧妙な語り口で綴られていく・・・
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ここの語り口が、かなりポエトリーでエモい

白鷺洲伊綱23歳の秋。」

という〆文句を経て、

クライマックスすぎる序章がようやく終了する。

 

あとで、もう一度振り返ろうと思うが、

伏線だらけの素晴らしい序章の引きであった。

 

・1章

場面は、5年前へ。

主人公は、記憶喪失の女性

自分が何歳なのかはわからない。

診療所で、目が覚める。

どうやら大鳳伊綱が介抱してくれたらしく、

伊綱と医師である白鷺洲龍希に自分のこと聞くが、

誰なのかはよくわからない。

ただ、どうやら、伊綱と自分は少し似てるらしいということがわかる。

そして、という仮名が伊綱により付けられる。

 

なお、伊綱の苗字はまだ大鳳

そして、医師の苗字が伊綱の今の苗字である白鷺洲

この二つの苗字が出てくることだけでも、

興味が尽きない第1章であった。

 

・2章

出歩けるようになり、伊綱と共に散策を開始する。

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ようやく、ゲームっぽくなってきた。

旅館の女将によると、

楓は10時頃に旅館に来て、

白鷺洲家への行き方を聞いていた模様。

ということで、白鷺洲家へ。

 

そして、キーパーソン、白鷺洲涼二が登場。

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この後の展開を知っている人からすると貴重な2ショット

伊綱がなんだか珍しく落ち着きがないのも、今ならわかる。

涼二は4年前から東京で探偵として働いていたが、

いまは療養しているとのこと。

 

なお、涼二さんの探偵としての活躍は、

この後のシリーズで登場する

五月雨は鈍色の調べ

で見ることができる。

ぜひこのあたりまではリメイクしてほしいものである。

 

本編に戻ると、

大鳳院家は、伊綱の父親(来興氏)が事故で亡くなり、

跡取り問題で大変とのこと。

 

そして、涼二は本当の感情を診ることができるようで、

どうやら、楓は喜んでいるらしい。

(なぜ喜んでいるのかは、後程わかることとなる)

 

旅館へ戻ると、

顧問弁護士の陸辺が現れる。
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伊綱は後を継ぐかどうかの決断を迫られてるらしい。

名家の遺産相続問題・・・誰かが殺されそうな展開である。

 

とここで、尚助おじさんが登場。 

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この人、一応親族ということだが、完全に遺産狙いであり、

最初から最後までお金のことしか頭にない。

 

そして、伊綱の祖父である兼正がいなくなった。

という一報が入り、不穏すぎるBGMが流れ、

伊綱が尚助に連れていかれてしまう。

 

・3章

伊綱が連れてかれたので1人で散策。

一度診療所に戻ると、

涼二の祖父にあたる、藤次郎が登場。

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もうかなりの御年なようで、引退を考えている。

龍希に継がせるようなことを言っている。

なお、行方不明の兼正は余命わずかだそうで、

あの家はおしまい 息子である京蔵が最悪だとのこと。

息子のことを完全にあきらめてしまっている。

なお、京蔵の妻である松子(涼二の母)はとうに亡くなっており、

フォンヒッペルリンドウ病(VHL病)という難病だったそう。

 

一通り話を聞くと、大鳳院家へ。

楓はなぜか迷わない。

ずっと昔に来たことがありそうとのこと。

家政婦の門生佐和子に話を聞く。

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伊綱の母はいないらしい。

大旦那様である兼正を心配している。

 

そして、くちばし山で祖父を探しに来た伊綱と合流

祖父の言いつけ「崖の上には行くな」を守ってきた。

伊綱の母は若紗というらしく、伊綱龍希許嫁らしい。

結婚が合併のきっかけになりそう、という状況なのだが、

伊綱には夢があり、家庭には入りたくないとのこと。

 

その夢というのが、名探偵なのである。

鞠浜にいる名探偵のもとで働くのだという。

ファンにとっては、この夢を語るシーンも、

相当なエモさである。

実はこの名探偵こそ癸生川であり、

涼二が働いていた場所でもある。

それを、本人には面と向かって言えないが、

楓にだけ心を開いて本心を素直に語っている

という名シーンなのである。

 

というところで、前半が終了。

ここから後半である。

 

・4章

伊綱とともに、崖の上の湖へ。

調査をするが、兼正は見つからない。

 

なお、湖を調べると、取り残された1羽の白鷺がいる。

この演出が涼二を暗示しているようで、切ない。

 

診療所へ。

龍希は今後も診療所で働くつもり。

伊綱が望むなら結婚はするとのこと。

 

・5章

陸辺から、伊綱の説得を頼まれる。

伊綱を引き取った家が跡取りになるとのこと。

また、このとき失踪した場合の説明もされ、

危難失踪の説明もついでにされるのだが、

まさかこれが後々効いてくるとは・・・。

 

そして、姉の伊綱を名乗る九宝紗綾も登場。

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何とも意味深なセリフを残してくれた。

これでますます大鳳院家の遺産争いが激化しそうである。

 

困った楓は、白鷺洲家の涼二のもとへ。

涼二によると、

大鳳院家は、飯綱使いの伝承を信じているらしい。 

呪法師の家系で信じられている伝承であり、

男子が生まれ、その男子の長女には飯綱使いの血が濃く現れる。

薬剤調合の素質があるとされ、伊綱と名付けられる。

とのこと。

 

また、涼二と龍希は母親は異なるらしく、

涼二の母が松子であり、資産家の娘だったことから、

経営の立て直しに利用されたらしい。

龍希3歳の頃に連れてきた隠し子であるらしい。

 

さらに、ここで涼ニは癌を患っていることを楓に告白。

すでに全身に転移しており、

母から遺伝したVHL病が原因とのこと。

余命はあと半年だそう。

 

それでも、伊綱は涼ニのことが好きであり、

涼ニもそれを分かっていた。

 

そんな中、湖に向かうと、

なぜか龍希がいて、そして・・・

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行方不明だった兼正氏、その人だったのである。

 

・6章

刑事がやってくる。

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湖のほとりにあった岩が無くなっていた。

遺体にはロープが巻かれていたとのこと。

大岩にロープを括り付けた状態で、

大岩が湖に落とされたことで、

兼正も沈んでいったとのこと。

 

伊綱が兼正と湖の近くにいたという目撃証言から、

伊綱がまさかの容疑者になってしまう。

 

そんな中、兼正の遺言が発表され、

遺産は孫の伊綱に全て与えるとのことに。

 

ただし、紗綾がもってきた戸籍謄本とともに事態は一変。

伊綱は来興氏が家政婦を孕ませて産ませた隠し子で、

紗綾の代わりに籍を入れて育てられたとのこと。

 

伊綱はそれを紗綾から今日知らされ、

それによって伊綱がヤケになって、

兼正氏を殺害した、というのが警察の見解だそう。

 

楓は白鷺洲邸へ。

京蔵が現れるが、

楓に対して

「お前なんか知らんぞ帰れ。」

と言い放ち、引きこもってしまう。


駅に行くと、妙な男の目撃証言が。

その言動から、癸生川だろうと推測される。

癸生川が現れたということは、解決が近い

 

少し安心しつつも、湖に再び向かうと、

なんと龍希と紗綾が密会している。

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これ完全に黒じゃん。

 

とか思いながら、湖を後にすると、

警察の取り調べを終えたらしい伊綱と合流。 

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しかし、伊綱の後ろで紗綾が死んでいる。

さっき密会してたばかりなのに、いささか急展開すぎる気がするが、

直前まで一緒にいた龍希がすこぶる怪しくなってくる。

 

ただ、死体のそばにいた伊綱は、

浜田警部に見つかり、またも連行されてしまう。

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この楓のメッセージが素晴らしい。

まだこの時点で楓の記憶は戻っていないのだが、

おそらくある程度、伊綱との関係性を悟ったうえでのものだろう。

そう思うと、深いなあ・・・。

 

・7章

病院に戻る。

手のひらを返したかのように、

伊綱を悪人扱いする藤次郎と喋っていると、

逃げてきた伊綱が窓から入ってくる。

伊綱は「絶対に自分はやっていない」と主張。

しかし、残念ながら再び警察に連れていかれてしまう。

 

その後、湖で龍希に会うが、

彼も伊綱を犯人扱い

まあ、紗綾と密会していた時点で、怪しいわけだが。

 

ということで、頼れる人がいなくなり、

涼ニを探しに白鷺洲邸へ。

 

すると、

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涼ニは不在だったものの、

さきほどの予想の通り不審者・癸生川が登場。

涼ニは極めて優秀な助手だったようで、

なんとしても連れ帰りたいとのこと。

 

楓が状況を話すと、

癸生川はあっという間に何かに気付いたようで、

一緒に湖へと向かう。

 

そして癸生川は突然、崖から飛び降りてしまう

そこに涼ニも現れる。

 

戻ってきた癸生川は、

「これが万能薬です。」

と得意げ。

 

再会した涼ニとともに、

今回の事件の真相を語りだす。

 

ざっくりまとめると、

伊綱の母である若狭は、

兼正の妻ナズナの近い親類であり、

血が濃くなれば飯綱使いの血が濃く表れるという歪んだ因習から、

来興氏と結婚する運びとなった模様。

戸籍謄本は、兼正の指示で改ざん

 

しかし、血が濃くなれば奇形児率が跳ね上がる

若紗は奇形でなく生まれてきた我が子を、

兼正の思う通りに育てるのを嫌い、

生まれてきた紗綾を逃がしたのである。

ただ、それを兼正が許すはずもなく、

若紗は崖から突き落とされてしまった

落ちた若紗は偶然引っかかった横穴の中で力尽きたが、

その横穴こそが、先程癸生川が見に行っていた場所であり、

なんと、先代の伊綱が残していた研究所だったのである。

 

研究所に残されていたのは、

大量の薬品と薬草と、屍蝋となった若紗の遺体

万能薬の素材は屍蝋となった人間の遺体だったのである。

 

湖の湿気と気温などが影響し、

屍蝋ができやすい環境であったこの横穴は、

研究にもってこいの場所であった。

 

そして、若紗の遺体を探した際に、

この研究所の存在屍蝋となった若紗に気付いてしまった兼正。

兼正が先代の研究に興味を持たないはずもなく、

材料の屍蝋も存在するわけで、

万能薬の研究に没頭していった。

 

そして、最近になって、

真に万能薬を欲する人間が、

この研究所の存在に気付いてしまった。

それが、今回の一連の事件の犯人

自分こそが万能薬を開発するため

兼正の研究データを奪うために殺害したのである。

その人物こそ、白鷺洲龍希であった。

 

なお、紗綾については、

自分の母が切り刻まれるのを見てしまったことによる、

ショックで縄梯子から落ちたという、

事故ではないかという推測がされているが、

こちらも龍希が殺したのではないかと個人的には思っている。

 

しかし、このとき、両探偵が真相を話しているのを、

犯人である龍希は、物陰からすべて聞いていたのであった。

 

逃げる龍希を追いかける一同。

そんな中、楓の記憶がついに戻る

私、伊綱さんと会ってはいけなかったんです。

結婚を止めるために…

 

龍希が伊綱を人質に取る

龍希も実は隠し子で、

産んだ母は白鷺洲家から追放されたという。

その後、大鳳院家にも雇われたらしい。

おそらくこの人こそがだと推測される。

 

その楓が、渾身の説得。

「初めから捨てるつもりなら、

そんな負い目を抱いてまで子供を産んだりしません。」

 

全ての記憶が戻った楓、

おそらく、龍希伊綱はいずれも自分自身であり、

ふたりが実は兄妹であることは自分しか知らない、

だから自分が結婚を止めるしかない

という理由で、記憶喪失前の楓は百白村に戻ってきた

と推測される。

 

「龍希さん、私があなたにした仕打ちに比べたら、

あなたがしたことは些細な事なのでしょう。」

このセリフも、実の息子に対してのセリフと思うと、泣けてくる。

ちゃんと、育ててあげられなかった、という悔いだろう。

 

そんな緊迫した場面が続く中、癸生川が登場。

龍希は証拠の隠滅を図るため、山に火を放っていた

逃亡した龍希涼二が追いかけていく。

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そして、伊綱もそれを追って、炎の中へ

 

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いやー、このセリフが切ない・・・。

ここをセリフ上であえて隠しているあたりが、

考察しがいがあって、すばらしい演出だった。

(正直、最初に遊んだ高校1年生の頃は全く分からなかった。)

 

そして、炎の中で倒れ込んだ伊綱は、

涼ニとの幼い頃の記憶を思い出す。

 

探偵になる涼ニを心の中では応援していた。

だから、志半ばで断念せざるを得ない彼の意思は、

わたしが受け継ごうと思った。

それが、名探偵の夢だったのである。

 

そんな中、どこからか、涼ニが現れる。

炎の中で、ふたりは抱き合う。

伊綱「誰かさんの代わりに世界一の探偵になってあげようかなって思ってたんですけど。それももう無理ですね。」

涼二「じゃあなおさら、死なせるわけにいかないな」

このセリフ、最高過ぎる。

 

そして、涼二の最期の言葉。

「約束だ。何があろうとも強く生きるんだ。負けるなよ。」

 

そして、モノローグとして楓の述懐。

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一羽の白鷺が山から飛び立っていくのが見えた。

その羽は炎を映し紅く紅く輝いていた気がした。

 

ということで、1羽だけ取り残されていた白鷺の伏線も見事に回収。

もう涙が止まりませんよ。

 

・8章

エピローグでふたたびの神BGM(メインテーマ)が流れる。

伊綱は翌日救出されたが、

涼二の姿は見つからず、

炎で溶けた指輪だけが残った。

危難失踪、ということになれば、

1年間、戸籍が残るので、結婚・入籍ができる

(陸辺の危難失踪の説明の伏線もここで回収)

 そして伊綱は、遺産の権利を放棄

危難失踪した涼二と結婚し、

1年後に未亡人となる道を選んだのであった。

 

楓は、本名をいつか伊綱に伝えてほしい

癸生川に伝えて桃白村を去った。


1年後、伊綱は、鞠浜台の探偵事務所を訪れる。

伊綱「あの私、白鷺洲伊綱です。突然すみません。実は…」

癸生川「おお、やっと来たか!遅いぞ、伊綱君!何をしてたんだ今まで!仕事はたくさんあるぞ!さあ早く!」

伊綱「え?あ、はい!はいっ!」

そして彼女はその名前に多くのものを背負わせ、

彼に託された強さを胸に探偵としてめざましく成長していくのであった。

 

それから4年

序章の伊綱と矢口の会話に戻ったところで・・・

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ということである。

 

鮮やかすぎるラスト。

余韻残りまくりで、

しばらく茫然自失状態となっていた気がする。

 

そして、1周目ですべての真相を知ったうえで、

2周目で読み進めることになる序章こそが

本当のラストシーンになるという、

秀逸すぎるストーリー構成

 

序章の珠恵(楓)さんとの、意味深な会話が、

ストーリーをすべて進めてから読むと、

何十倍にも味わい深くなるのである。

 

いやー、最高でした。

この作品単体でのクオリティはもちろんのこと、

シリーズを通してを考えても、

伊綱のバックボーンを理解することができたという意味で、

この4作目はすごく重要な作品だったと思う。

 

2作目(海楼館)で大森さんに伊綱が語っているセリフ、

8作目(五月雨)の涼二のセリフ、

9作目(永劫会)での伊綱と癸生川のやり取り、

他にも挙げればきりが無いが、

ほぼすべての作品に密接に関連しており、

まさに一連の物語の核となるストーリーになっているのだ。

そのような観点からも、

癸生川シリーズを遊ぶうえで、

決して避けては通れない作品

と言えるのではないだろうか。

 

 

ということで、

ネタバレ全開で語ってしまい、

見事に過去最長を更新してしまった。

 

それだけ思い入れの深い作品を、

内容が理解できる年齢になって遊ぶことができ、

本当に素晴らしい体験であった。

物語を生み出してくれた生王先生をはじめ、

リメイクしてくださったG-MODEさんには大感謝である。

 

そしてなんと、

今月末には第5弾である、

昏い匣の上 

が配信されることが決定したとのこと。

嬉しい限りである。

 

なお、こちらには生王伊綱は出てこず、

別の主人公が登場し、癸生川は少しだけ登場する、

若干シリーズ外伝に近しい作品となっている。

本作ほどの思い入れはないものの、

相変わらず面白かったという記憶はあるので、

いまから遊ぶのが楽しみである。