腸壁を削って美味い物を食す

元潰瘍性大腸炎(軽症)患者であった筆者(現在は完治済)が、症状が再燃するリスクを覚悟してでも食べたいと思うほど美味しかった逸品(主に麺類)を紹介していくブログです。不定期更新ですが、地道に書き進めていきます。よろしくおねがいします。

190.「君の名は。」特典ディスク③感想

3枚目の特典ディスクの内容は次の2つ

新海誠監督による講演

・イベント映像集

 

以降、ネタバレ注意

 

1.新海監督による講演「君の名は。の物語」

新海監督の出身に近い、長野県佐久市の図書館で行われた講演。

この映画のストーリーの作り方を監督自ら解説している貴重な映像である。

 

以下、ざっくりと要約しながら感想を。

 

ログライン=「話の概要を数行でまとめたもの」

君の名は。は、以下の2つのログラインを組み合わせたものである。

A「夢で出会った少年と少女がやがて現実でも出会う話」

B「夢のお告げを受けた少女が、人々を災害から救う話」

 

物語の因果律=物語の中で語られたことは物語の中で必ず起こる。

・古典教師の黄昏時に物の怪(死人)と出会う→瀧と三葉が黄昏時に出会う

・三葉の「イケメン男子にしてください」→次のシーンで初めて三葉と瀧の入れ替わりが起こる

伝統工芸(組紐)や巫女舞の中に、メッセージとして彗星が落ちることを含めている。

3.11の大津波のときに話題になった「大津波石碑」がモチーフ。

此処より下に家を建てるなという石碑があって、そこより上に家を立てて入れば安全だったらしい。つまり、過去にも大地震津波が来たということ。

 

前前前世はログラインAからログラインBへの転換点としている。

その事を示すためにも、直後に一葉から世界観の説明を入れている。

「寄り集まってかたちをつくり、ねじれて絡まって、ときには戻って途切れてまた繋がり、それが『結び』、それが『時間』。」 

御神体のところでは「川=この世とあの世の境」という形で物語の基本が解説される。

「境界を越えて、戻ってくる」

これは昔からある「物語」の基本構造であり、ログラインBはこの構造。

赤ん坊の頃から「いないいないばあ」で刷り込まれている。

千と千尋もそう。

桃太郎もそう。

浦島太郎もそう。

行って帰るたびに、少し成長している。(浦島は成長しすぎだが)

 

入れ替わりが突然終わるところで再びログラインA。

ボーイミーツガールからのボーイロストガール。

月が電線で2つに分かれているなど、状況を風景でに表現しているのはさすが。

 

昔話の中で、迷ってしまったときに導くのは「糸」である→なので、今回は「組紐」。

口噛み酒によりもう一度境界を越えていく。 

三葉の父を説得できれば避難させて勝ちであり、ラスボスは父。

ラスボスが父という作品は意外と多く、FF10やシュタゲ、美味しんぼなどもそう。

これも昔からある典型的なストーリー。

 

そしてカタワレ時。

2人は初めて出会うわけである。

ログラインAとしての山場。

 

 

逢瀬の後はログラインBを成就させなきゃいけない時が来る。

「ついに時は来た、昨日までは序章の序章で…」という歌詞がピッタリ。

 

ログラインBの話をしながらも唐突にやってくるログラインA「すきだ」←瀧が伝えたかったのは名前よりも感情だった。

そして、向こう側で2つになった糸守湖を見てから戻ってきた三葉は、もう以前の三葉ではないことをラスボスである父親は気づいていた→説得成功。

これでログラインBが完成。

 

そしてエピローグ。

何度も行って帰る物語を経験したふたりが、ただ普通の男女として出会うわけである。

もう少しだけでいい。後少しだけでいいからくっついていようよ。

これがもしかしたら一生に繋がるかもしれないという願いを込めて作っていたという。

 

ロマンチックで、いわゆるボーイミーツガールの王道であるログラインAの展開と、 

「行って帰ってくる」という普遍的な物語を基本にしたログラインB。

この2つの話を軸に物語が組み上げられていることが、ここまで日本人の心に刺さった要因の一つであることは間違いない。

講演の最後で、物語を読むこと自体が「行って帰ってくる」体験のひとつであり、そういうことを積み重ねてみんな成長していく。

という話があって、なんだかすごく腑に落ちた。

成長するためにはどこかに行かないとダメだということだ。

 

2.イベント映像集

・制作発表記者会見

→まだ完成していないが、この時点から「最高傑作」になると明言されていた。それほど自信があったのだろう。それも頷ける出来になっていると思うけど、言われた監督のプレッシャーはすさまじいものがあったと思う。

 

・ワールドプレミア2016

→全世界初公開がワールドプレミアというのもすごい。向こうの人はリアクションが素直らしく、声も出しまくるとか。おっぱいのくだりは大爆笑。三葉が消えるところとか、ラストシーンは絶叫の嵐だったという。

 

・完成披露試写会

→ここから日本での快進撃が始まるわけだが、やっぱり神木の挨拶はうまいなと思う。市原さんがネタバレしかけてて、監督はヒヤヒヤしたんじゃなかろうか。

 

・大ヒット御礼舞台挨拶

→この挨拶は貴重。RADWIMPSがサプライズで登場したり、前前前世の弾き語りや、上白石萌音とのセッションの部分も含まれている。ニュースなどで見てはいたけど、フルバージョンで見れてよかった。

 

・釜山国際映画祭

10月ということで、100億円を突破している時期。

韓国でもかなりヒットしたようだ。

神木・上白石・新海監督の3人で一緒に見るというのは久しぶりだったらしい。

 

・クリスマス大合唱上映会

年末なので、興収200億円を超えていた時期。

正直、大合唱をしたいとは思わなかったが、応援ってのは面白いかもしれない。

ご神体で口噛み酒を飲むときは「イッキ」コール、

かたわれ時で三葉が消えた直後に「早くメモれ!」という応援が入っていたらしい。

そういう受け狙いの合いの手とかが入ってくると面白いのかもしれない。

 

3.総括

ということで、全5枚中4枚の感想を書き終えた。

あと残り1枚あるが、4KウルトラHDということなので、

対応する機械を持っていない以上、見ることができない。

ただ、いつか対応するものを買うときが必ずくると思うので、後悔はしていない。

これだけの内容が入って、1万円を切るのは逆に安いと思う。

 

本当にこの作品に出会えてよかった。

しばらくはこの感動に浸りたい。