稲荷屋さんの2月3月の限定。
色々と忙しく、3月に入ってからの訪問となってしまった。
メニュー名が相変わらずフランス語のため、タイトルも長くなってしまった。
正直、もっと早く食べればよかったと後悔している一杯なので、
3月は年度末で忙しい人も多いとは思うが、チャンスがあればぜひ食べて頂きたい一杯である。
今回のメイン「パンタード(pintade)」とは「ホロホロ鳥」のこと。
日本に住んでいて、ホロホロ鳥を食べたことがある人は、果たしてどれだけいるのだろうか?
高級フレンチに良くいく人なら食べているのかもしれないが、私は正直今回が初めてであった。
フランスでは家禽類をよく丸のまま調理するため、市場やスーパーでも良く打っているそうなのだが、日本で売っているところはあまり見かけない。
味も全く想像できなかったのだが、稲荷屋の限定は間違いないだろうということで、「ホロホロ鳥」初挑戦である。
ジュ・ド・パンタードとパンタードのバロティーヌ
運ばれてきた瞬間から、ハーブの香りがなんともさわやか。
メニューの下に「ハーブが嫌いな方は頼まないでください」と書いてあったのも納得。
でもパクチーのような強烈な感じではないので、あまり苦手な人はいないのではないだろうか、と個人的には思う。
まずスープをひとくち。
恐ろしく美味しい。
「美味しい」という言葉だけで頭が埋め尽くされてしまったので、もう一口。
冷静になって味わってみると、
トマト系を中心とした野菜の優しい甘味と、鶏よりも強いコクと若干の野性味(おそらくホロホロ鳥なのだろう)が絶妙なバランスとなっている事に気付いた。
飲んだことないジャンルのスープで、とにかく美味しい。(語彙力不足)
券売機に書いてある解説によると、
・ホロホロ鳥のジュ(煮詰めた出汁)
・トマトコンカッセ
・ミント
・タラゴン
の4種を組み合わせたスープらしい。
タラゴンは聞き覚えが無かったので調べてみると、
キク科の多年草で、様々な料理にスパイス(ハーブ)として使用されるとのこと。
甘い香りが特徴で、とり肉や卵や海老系の料理によく合うらしい。
ミントだけだと爽やかになりすぎると思うので、きっとこのタラゴンがこのスープのポイントなのだろう(と勝手に思っている)。
麺は、鹿肉(フォン・ド・シュブルイユ)のときと同じ、タリアテッレ風の平打ち麺。
これがスープと良く絡んで非常に美味しい。
出汁が効いた濃厚系スープには間違いなく相性のいい麺だと思う。
トッピングはハーブを除けば2種。
・ホロホロ鳥のバロティーヌ
タイトルにも含まれているメイントッピング。
ちなみにバロティーヌとは、主に鶏肉や魚肉等の骨を除いて詰め物をしたものを低温で茹でてアスピックで覆い、冷たくして提供するフランス料理である。
ホロホロ鳥は、少し野性味があるが、特有の癖などはなく上品な味。
中の詰め物が絶品で、とろけるような食感と、ハーブの爽やかさと、フォアグラの濃厚さと、肉の旨味と、もう色んなものがまじりあって、それでも喧嘩することなく見事に調和されていて全体としてものすごく美味しい。
解説によると、
詰め物自体はファルスと呼ばれているものらしく、中身は以下の通り、
・ムネ肉(ホロホロ鳥)
・豚ネック
・レバー
・セージ
・フォアグラ
・タラゴン
・パセリ
・クォーターエピス
らしい。
なお、クォーターエピスは、フランスの伝統的なミックススパイスで、
シナモン、クローブ、ナツメッグの3種と、辛みスパイス(こしょう、ジンジャーなど)の計4種類の組み合わせが一般的とのこと。4種のミックスだからクォーターということである。
なお、気になったので店長に訪ねてみると、このバロティーヌは、前回の限定(※)ビーフコンソメの上にじつは乗っかっていたらしい。
「やっぱり」という感じ。
実はサービスだったようで、ありがとうございました。
・イモのピューレとクレープ
これがまた素晴らしかった。
クレープがラーメンの上に乗っているなんて、初めての状況である。
ほんのりトリュフの香りがするクレープの中には、ミルキーなイモのピューレ。
マッシュポテトよりも滑らかで、クレープに包んでいないとスープに溶けていってしまいそうなくらいトロトロ。
これにスープをたっぷりまとわせてかぶりつくのはもう最高である。
普通のジャガイモのはずなのに、なんだかチーズのようなコクも感じられ、それがトマトベースのスープに合わないわけがない。
正直、100円増しでいいから、追加でもう一個ほしいくらい美味しかった。
ということで、今回の限定も素晴らしい美味しさであった。
これまで食べたことの無かった食材を食べさせてもらえたので貴重な経験にもなった。
ひととおり知った気になっていたが、まだまだ知らない食材が世の中にはたくさんあるんだなと再認識した。
また、最近は思うようにならないことが多々あり、気持ちが沈みぎみであったのだが、
一時的でもそれらを全部忘れて、美味しいものを食べる事だけに夢中になれたのは良かった。
たまたま夜朝と2食抜いてしまったあとの昼食がこちらだったため、なおさら多幸感を強烈に感じたのかもしれない。
直後にふと立ち寄ったスーパーにて、いつもは禁じられている「生クリーム系のデザート」に思わず手を伸ばしそうになるくらいには、テンションが上がっていた。(その後、翌日に大事な野球の試合があることを思い出して踏みとどまった。)
ということで、チャンスがあればもう一度食べに行きたいほどの逸品であった。
次回の限定こそはもっと早めに食べにいきたいと思う。
※前回の限定