腸壁を削って美味い物を食す

元潰瘍性大腸炎(軽症)患者であった筆者(現在は完治済)が、症状が再燃するリスクを覚悟してでも食べたいと思うほど美味しかった逸品(主に麺類)を紹介していくブログです。不定期更新ですが、地道に書き進めていきます。よろしくおねがいします。

264. 『エリートの倒し方』里崎智也 感想

クライマックスシリーズが盛り上がりを見せる今日この頃。

ポストシーズンにはめっぽう強いあの選手の顔が本屋で目についた。 

 

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里崎智也選手。

自分が主に野球を見ていた学生時代、常にロッテの正捕手だった。 

決してロッテファンというわけではなかったが、応援していた選手の一人。

野球ファンとして、2005年の日本一から2006年の第1回のWBCあたりまではずっと見ていたので、言わずと知れた名選手という印象が強い。

最近は野球解説でも良く出てくるし、野球解説以外でもテレビでちょこちょこ見るという印象。

 

そして、「歌って踊れるキャッチャー」という謎のキャッチコピーも斬新であるが、

この本には、その「歌って踊れる」という印象をいかに効果的につけるか戦略を練ったと書かれており、その知略の深さに戦慄した。

それが、この本を購入するに至ったきっかけである。

 

この本は野球がうまくなりたい人に向けて書かれた本では一切なく、あくまでビジネスマン向けに書かれているという点が、これまでの野球選手の本と大きく違うところ。

 

以下のような4章構成となっている。

第1章「一番になる人の意外な条件」

第2章「エリートに勝てるシンプルルール」

第3章「勝負強い人になる技術」

第4章「下剋上できる組織のつくりかた」

 

第1章では「一番になる人の意外な条件」として、

基礎的な姿勢や心の持ち方、努力の方法などが述べられている。

おもに里崎さんが入団してからレギュラーになるまでの話を中心に、

若手の選手がどうやって努力したら成長するか、あるいはどういう人が成長せずにそのまま終わってしまうか、という話が出てくる。

 

印象に残ったのは

・「自分を客観視する視線」をいかに厳しくするか

・全力でやって失敗したなら「仕方ない」とすぐ切り替える

・一流の人の話は最高の教科書、物理的に近づいて積極的に話を聞きに行く

・嫌なことも嫌々でいいから続ければ弱点ではなくなる 

といったところ。

イチローさんや小宮山さんなど、名選手との具体的なエピソードも多数あり、納得しながら面白く読みすすめることができた。

 

第2章では「エリートに勝てるシンプルルール」として、

組織の中でどうふるまうか、具体的にどうやって勝つ方法を探していくかという方法論が語られている。

PDCAの話や上司から見た部下の話など、一般の会社に置き換えた話もたくさんあり、どこかの会社に入られていたのかなぁと思うくらい、勉強になることが多数あった。

 

印象に残ったのは以下の部分。

・下積みのプロになる

→まずは与えられたところの下積みの仕事(基本)をプロ並みに極めるということが重要であるという話。里崎さんは1000試合以上出場したキャッチャーの中で最もパスボールが少ないという記録を持っていて、それは新人時代に徹底した練習の賜物であったらしい。

 

 ・アイデアを人に話せば「善し悪しがわかる」「悩む時間が節約できる」「うまくいったら自分の成果になる」

マリンスタジアムのリボンビジョン導入や、風速計付近の広告欄は、里崎さんのアイデアらしい。

 

・反省は調子のよいときにするもの

→自分がベストの状態の時に、うまくいくやり方や条件を分析しておく。そうすればスランプに陥っても早く立ち直ることができるとのこと。たしかに、良いイメージだけを体に覚えこますという意味でも重要だと思うし実践していこうと思う。

 

第3章では「勝負強い人になる技術」として、

回ってきたチャンスをどう活かすかについて語られていた。

・一発勝負の場面こそ「うまくいけばラッキー」

→勝ちたい気持ちが強いほど、「負けられない」と焦って良い結果が出ない。「これがダメでも、他がある」くらいに考えた方がうまくいくとのこと。

 

・ほしいイメージは逆算してつくる

→上述の「歌って踊れる捕手」の話。実は現役時代に歌ったのはたった4回だとか。実は、歌うと印象に残るであろうタイミングを練りに練って、日曜日のデーゲームをずっと狙っていたらしい。

日曜日のデーゲームであれば、その夜のスポーツニュースは他の曜日より長時間になるから、映像も使われやすい。さらに月曜日はサラリーマンがスポーツ新聞を買う可能性が高い。さらには、エースであった渡辺俊介が好投して、かつ里崎自身が打ってヒーローインタビューに上がるタイミングがあれば最高であり、それが、まさに起きたのが、初めてステージに上がった2005年5月29日のことだったらしい。

当時の自分も、まさにその戦略通りにニュースを見たし、印象にも深く残っていた。

 

第4章では「下剋上できる組織のつくりかた」として、

チーム・組織作りを中心に、教育やマネジメントにまで言及している。

主にバレンタイン監督の組織づくりを例に出していることが多く、選手の起用方法やモチベーションの上げ方は確かに上手かったんだなと感じた。

 

とくに印象に残ったのは

・ 今の1番を目指すより、10年後の1番を目指す方がはるかに大事

・「頑張ったけどダメだった」で終わらせない。結果が出るようにやり方を変えるべし

・ リーダーが示すべきは「責任をとること」ではなく「逃げない覚悟」

 

・好調を全員でシェアする工夫が勝てるチームを生む

→バレンタイン監督は、普通なら手堅く勝ちパターンの選手起用をするようなリード時に、リスクを承知であえて若手選手を投入することによって、全員に成功体験を積ませたそう。これによって、うまくいけばチーム全体に好調が伝わり、「勝てる」チームになっていくらしい。

日本ではよく負け試合に若手を投入して経験を積ませるというのがあるが、確かにプレッシャーのかからない場面で試合を経験させるというのは重要かもしれないが、「負け」という失敗経験を共有するだけで、緊張感もないので逆効果になるという。

 

・チームの目標は、みんなが狙えてわかりやすいものがベスト

→バレンタイン監督は一時期、日本で一番「ツーベース」を多く打つチームにするという目標を立てた年があったそう。

ホームランは誰でも打てるものではないし、スリーベースは足が速い人でないと打てない。ただのヒットは誰でも打てるけど、塁が1つしか進まないので、それを目標にしても効率が悪い。

そこでツーベースである。非力な人でもある程度は打てるし、足が遅い人でも外野の間を抜けば2塁までは行ける。それに2本出れば1点と効率も良い。

そう考えるとちょうどよい目標だったようで、実際にその年のロッテはペナントでは惜しくも2位だったものの、ツーベース数ではしっかり1位になったそう。

 

ということで、

初めて里崎さんの著書を読んでみたわけだが、予想以上に自分の仕事に役立ちそうな内容が数多くあった。しかも、それをプロ野球での事例になぞらえて説明してくれるので、非常に分かりやすい。

野球好きの若手社員が社会人の基礎を知るため読むには最適なのではなかろうか。自分も社会人4年目でまだギリギリ若手といえる年次なので、身に染みるところはたくさんあったし、ここまでの社会人生活でズレてしまった部分の軌道を修正するためにも、買ってよかった一冊であった。