腸壁を削って美味い物を食す

潰瘍性大腸炎(軽症)持ちの筆者が、病状が悪化してでも食べたいと思う逸品(主に麺類)を思いつくままに紹介するブログです。

346. ドラマ『ブラックペアン』感想

原作がすごく好きで今回のドラマも楽しみであったが、

最終回が非常に素晴らしかったというのもあって感想を書いてみようと思う。

 

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原作は「ブラックペアン1988」というタイトルで、「チームバチスタの栄光」シリーズでおなじみの海堂尊先生の作品。

原作の「ブラックペアン1988」では「バチスタシリーズ」との関連性が大いにあるが、今回のドラマでは完全に単独の話となっている。

原作で描いている時期は、タイトルの通り1988年。

外科の手術の内容も、一般外科、おもに消化器の話。

高階の推進する医療機器「スナイプ」は食道を吻合する機器である。

一方でドラマ版は2018年のリアルタイムの話。

心臓外科の話になっており、スナイプも僧帽弁置換術用の機器となっている。

そのあたりで、医療的にはリアリティがあるのだろうかと疑問はあったが、

今回のドラマの手術シーンは、作中の渡海先生のような心臓外科医のまさにプロフェッショナルの先生が医療監修されており、

ドラマ公式HPの「片っ端から教えてやるよ」のコーナーで全32回にわたって詳細をすべて解説してくださっている。

非常に勉強になったし、わかりやすくそして楽しく読ませてもらったので、今後の医療ドラマではぜひ同じように解説を付けてほしいところである。

また、400ページぐらいの原作を10話のドラマに仕立てなければならないので、登場人物も多くなり、治験コーディネーターや帝華大の先生方も登場。

インパクトファクターをすべてとする西崎教授のキャラは実際にはいないと思うが、ドラマの敵役としては面白かったと思う。

 

また、主人公は原作では世良だが、ドラマ版では渡海となっている。

原作では、「ブラックペアン1988」のあと「ブレイズメス1990」「スリジエセンター1991」へとつながっていき、その2作とも世良が主人公であり、渡海は出てこない。

このため、このブラックペアン1988だけを扱って物語を閉じるのであれば、主人公を渡海とするのが正解かもしれない。

その渡海の性格は、ドラマ版ではより誇張されて描かれている。「オペ室の悪魔」と呼ばれているのは相違ないが、原作ではあそこまで金にがめつくない。

「1000万で助けてやるよ」とも言わない。

それでも、渡海の腕(自分の技術)だけを信じるというスタンスは原作そのままで、かなり高い再現度だったと思う。

 

序盤の展開としては、スナイプを引っ提げて帝華大からやってきた高階が佐伯外科に新しい風を吹き込み、「誰でも使えるマシン」と「最高の腕(技術)」との争い、という構図は同じ。

しかし、ドラマ版では高階先生のミスが多く描かれていて少し可哀想になった。

原作でも高階先生以外がスナイプを使えという佐伯教授からの指示で、関川先生が失敗するというくだりはあったが、高階先生自身はほとんどミスをしていないのである。

それでも軸としては変わらず、医療技術が発展していく際にはつきものの、新しい研究VS既存技術という対立は、面白く見ることができた。

また、このスナイプという機械はもちろん架空の機械なのであるが、実際に似たような治療器具の開発は研究されているらしく、治験なども欧米では盛んにおこなわれているとのことである。

 

ドラマ後半では、スナイプだけにとどまらず、ダヴィンチ(カエサル)も導入された。

それに、佐伯教授も病魔に倒れるという展開。

これらは原作には全くなく、意表を突かれた。ここに繋げたいために、心臓外科にしたのかと思うと、その構成力に頭がさがる。

 

そして、最終話。 

ブラックペアンの真相はほぼ原作通り。

あのペアンがないと深部の止血ができないため留置していて、

渡海と高階では出血を止めることができず、最後に佐伯教授がドクターヘリで舞い戻って、ブラックペアンを使って閉胸する。

ブラックペアンは特注のカーボン製でレントゲンには残らない。

ここまでは、原作とほぼ同様。

 

原作にはない西崎教授との教授選挙バトルについては最終回で決着。

「最新の研究」と「最高の腕」その両輪で補い合い高めあうということが佐伯教授の理想ということで、インパクトファクターおじさんは負けたわけだが、

「最新の研究」の象徴の高階と「最高の腕」の象徴である渡海がタッグを組むのが、佐伯教授の理想でもあったと思われ、それを実現するために高階を受け入れたとすると、非常に読みが鋭いなと思った。

 

また、ここからの人間ドラマパートが素晴らしかった。

父親との因縁もあり、あれだけ敵視していた佐伯教授に対し、

「医者は患者のことだけ考えろ。 救え。 ただ人を救え。 俺の尊敬する医者の言葉です。」

このセリフは反則的である。原作にはないセリフだったし、二人の因縁が一気に溶けた瞬間でもあったので、感動がとてつもなかった。

 

また、感動とともに、自分自身の働き方についても、ハッとさせられる部分があった。

働き方改革という言葉が蔓延してきた結果、テキパキ時間内に仕事を終わらせて、時間外の仕事、他人の仕事は絶対やらない、少しでも大変になると諦めるという人が増えているという。

早く家に帰ることは罪ではないし、休みがあってこそ日頃の仕事も効率的にできるというのは一理あるとは思う。

自分が入社した当初は、先輩方は全く休まなかったし、それが当たり前であると自分でも思っていた。毎日終電まで残って、空いた時間は勉強をして、早く家に帰れと言われたこともあった。

それでも、近年の働き方改革にかまけて、当時に比べると、力を抜いてしまっているように思う。


命を捨てて患者を守った渡海一郎先生のように、命をかけて患者を救った佐伯教授のように、命を削って仕事をするのが、ベストな生き方なのかと言われると、絶対そうとは言い切れない。

ただ、渡海先生の天才的な技術は、亡き父の無念を晴らすという強い気持ちから、尋常じゃない練習と実践を重ねて生まれたわけで、そこに効率の良さや、早く帰ろうという意識なんか絶対にあるはずがないと思う。

まあ、働き方改革を全否定はしないけれども、会社の中でのルールは守りつつも、もっと自分の仕事に誇りをもって、取り組まなければならないなと感じた。

 

自分には、心不全のために突然死した亡き友人が居り、たまたま自分が今開発しようとしている機械は、将来的にはその友人のような突然死を防ぐことができる可能性を秘めている。

近い将来、それを実現するためにも、もっと頑張らなければならない。

長くなってしまったが、ただ面白いというだけでなく、自分の生き方を考えさせられる、非常に思い出に残るドラマであった。