腸壁を削って美味い物を食す

元潰瘍性大腸炎(軽症)患者であった筆者(現在は完治済)が、症状が再燃するリスクを覚悟してでも食べたいと思うほど美味しかった逸品(主に麺類)を紹介していくブログです。不定期更新ですが、地道に書き進めていきます。よろしくおねがいします。

187. 「君の名は。」本編感想

映画が公開された2016年8月26日、レイトショーで見た。

あまりの素晴らしさに原作本や関連本などをほぼ買い漁った。

複数回は見に行かなかったものの、

詳細なシーンまで見直したいとずっと思いながらDVDの発売を待っていた。

 

今回、ようやくDVDが出て、特典も含めて何度も見直すことができたので、

今更感があるが感想・考察を書いてみようと思う。

 

(以降、ネタバレ注意)

 

 

 冒頭、いきなり物語のキーとなる重要なシーンや重要なセリフが次々と流れる。

「隕石の墜落」「8年後の三葉と瀧」

など、ラストにこういうシーンが来ますよーという伏線になっている。

ここの8年後のところは、瀧と三葉の声色がすごく大人びているのに驚いたが、

アフレコをラストシーンと一緒に行ったというから納得である。

 

そして流れるオープニングの「夢灯篭」

これが素晴らしかった。

歌直前のブレスとともに「ああ、このまま僕たちの声が」

と始まった瞬間に鳥肌が立ったのを覚えている。

RADの歌がいくつか入ってくるとは聞いていたが、こんなに早く歌が来るとは想定していなかった。

この夢灯篭、2分程度の短い歌なのだが、聞けば聞くほどいい曲で、歌詞も秀逸。

歌詞の中にタイトルがちゃんと含まれていて、まさにオープニングテーマ。

映像もこの映画がうまくダイジェスト化されている。

口噛み酒とか隕石とか、ともすればネタバレになりそうなところのシーンも出ているが、初回の人には気づかせない程度のちょい出しになっていて、

2回目見るといろいろニヤリとできるポイントが多数ある。

 

オープニングが終わると、しばらくは瀧と三葉の入れ替わりのドタバタの話。

予告編や番宣であったとおりの内容なので、ここまでは微笑ましく見れる。

周りの人の反応が凄くコミカルに描かれていて、劇場でも時々笑いが生まれていた。

個人的に嬉しかったのは何といっても「かたわれ時」を説明してくれる古典の教師である。

声が花澤さんだったのでもしやと思ってエンドロールを見ていたら「ユキちゃん先生」と書かれていて、「言の葉の庭」のユキノ先生であることが確定した瞬間は歓喜である。

前作ファンにとっては非常にうれしい演出であった。

正直、そっちに気を取られて「かたわれ時」の説明をちゃんと聞いていなかったわけだが、ここでユキノ先生は「かたわれ時」に死者と会えるという言い伝えを説明しており、重大な伏線の役割も果たしていた。

 

しばらくして、両者がたびたび入れ替わっていることを確信したタイミングで、

第2オープニングともいえる「前前前世」とともに入れ替わり中の様子が流れる。

CMであれだけテーマソングとして流されているから、てっきりエンディングなのかと思っていたが、全部見てから考えるとこのタイミングが最適だと思う。

また、映画版のみ「私たち越えられるかな、この先の未来数え切れぬ困難を~」と歌詞が変わる。

CDは違うバージョンなので、ぜひこっちのバージョンもリリースしてほしいものである。

 

前前前世が終わると、実は次が最後の入れ替わり。

三葉(瀧in)はご神体へ。

素晴らしい風景の中、おばあちゃんの語る「むすび」についての言葉が実に深い。

下山しようとすると夢が終わってしまい、瀧はそのまま奥寺先輩とデートへ。

デートはうまくいかず、三葉に電話をかけようとするがかからない。

実はここで三葉は彗星のことに日記で触れているのに、瀧は全然気づかないというのは3年ずれていることの伏線である。

初めて見たときにも、ここで「ただの入れ替わりものじゃなさそうだな」という予感がしていた。

 

入れ替わり現象が発生しなくなり、瀧と司と奥寺先輩は飛騨へ。

ここでついに、三葉が住んでいた糸守町には3年前に隕石が落ちたことが判明し、そのときに三葉も死んでしまっていたことがわかる。

つまり、入れ替わり現象は3年の時を超えていたのである。

ここは正直驚いた。

同時刻で誰かと誰かが入れ替わるという話はよくあるが、さらに時間がズレているというのは斬新だった。

そしてここからは、一気にシリアスな方向に進み始める。

宣伝や予告編などでここ以降の展開が完全に隠されていたのは上手かった。

瀧は記憶だけを頼りにご神体へとたどり着き、そこで口噛み酒を飲むことで再び三葉と入れ替わって過去の糸守へ。

これも、おばあちゃんの「むすび」の語りが効いていて、口噛み酒という三葉の半身を体の中に取り入れることで魂と結びついて入れ替わりが起こったというところなのだろう。

ちょうど隕石が落ちる日にタイムスリップしているのは若干ご都合主義的な気もするが、そうじゃないと面白くないので、ここは無理やり納得した。

ちなみに入れ替わり直後の泣きながらおっぱい&四葉のリアクションは笑った。劇場でも大ウケだった。

これまでの新海作品ではこういったコミカルなシーンがなかったので、ちょっと意外だったけど、どれも面白かったので良かった。

 

ここからの糸守救出作戦はテッシーの活躍が素晴らしい。

爆発物も通信機器もお手の物、原付も運転できるなんて、高校生にしてはスペックが高すぎる。

残りは町長である父の説得だけなわけだが、三葉(瀧in)では説得できない。

ここで父に「お前は誰だ?」と言われるわけだが、そのあたりは別冊小説の方を読むとその時の心境が詳しく出ていて面白い(別記事にする予定)。

三葉(瀧in)は、三葉本人と会うためにご神体へ。

 

そして「かたわれ時」が訪れる。

ここのBGMが好きすぎてたまらない。夢灯篭のピアノバージョン。

ここからは名シーンの連続すぎて、正直、片時も目が離せない。

お互いを知ってはいたのになかなか会えなかった2人がついに再会する。

このかたわれ時だけは時間がズレていないので、瀧も三葉も同年齢ということになる。

この再会シーンはわずかな時間だけであったが、会ってから消えてしまうまで全部のセリフが良かった。

お互いの名前を手に書き合おうとしたら、三葉が書ききれずに消えてしまう。

ここ、いきなり無音になってしまうのが凄く切ない。

瀧はこのときすぐに手に名前を書けばよかったのだが、「ムスビ」である組紐を三葉に渡してしまったこともあり、すぐに記憶が薄れてしまう。

そして流れ始める名曲「スパークル

一方の三葉はテッシーとともに作戦を決行しながら、町長説得に向かう。

途中で三葉の方も瀧の名前を忘れてしまう。

転んで、手のひらを見ると「すきだ」と書いてあって、そこから流れ始める「スパークル」のCメロ「愛し方さえも~」はタイミングが完璧だった。

三葉は再び町長のもとへ。

スパークル」の大サビとともに降り注ぐ隕石。

果たして三葉は父を説得して糸守町民を救えたのか?

瀧の「ただひたすらに美しい眺めだった」というセリフをはさみ、隕石が落ちて町が飲み込まれていく。

 

ここで一気に場面が飛んで8年後に。

瀧は就活中で建築業界を受けている様子。

奥寺先輩は婚約したようで「君も幸せになりなさい」という名セリフを残していく。

ちなみに設定によると相手は司らしい。

この場面でのモノローグで、8年前の糸守では死者が出ていない(歴史が変わった)ことがようやく明らかになる。

みんな助かっているだろうと予想はしていたが、ここは素直にうれしかった。

 

冬になって、瀧が入ったスタバではテッシーとサヤカが結婚式の相談中。

ここ2人がくっついてくれてよかったし、何より無事でよかった。

そのスタバの帰り、三葉らしき女性とすれ違う。

一瞬振り向きかけるが、そのまま行ってしまう。

そして始まる「なんでもないや」のイントロ。

秒速5センチメートルのすれ違ったままエンドの例があるので、このまますれ違ったまま終わりなんじゃないか…という悪い予感が横切った。

「終わらないでくれー、再会してくれー」と心の中で叫んでいた。

 

その思いが通じたのか、季節は春になり、映像は続く。

流れてきた歌詞は

「もう少しだけでいい、あと少しだけでいい」

ここはほんとに観客の気持ちを代弁していたと思う。

 

まず出てきたのは、糸守高校の同級生たち。

次に、17歳になった四葉

そして、瀧と三葉も登場。

2人とも総武線に乗り込む。

隣の電車とすれ違う一瞬、ついにお互いの存在に気付く。

このときの「ずっと…誰かを…探していた!」のセリフの表現が素晴らしい。

その後二人は電車を降りて、神社の階段でついに再会。

一瞬すれ違いそうになるが、瀧が勇気を出して話しかけ、

瀧・三葉「きみの…名前は?」

のセリフで、タイトル「君の名は。」がどーんと表示されて、END。

 

このラストシーンは本当に素晴らしかった。

何度見ても鳥肌が立つし、何度見ても泣ける。

 

公開初日に劇場で見たときは、特に試写会でもなかったのに、エンドロールが終わった瞬間に、一斉に盛大な拍手が巻き起こった。

おそらくこのラストでみんな感動したのだろう。自分も夢中で拍手してしまっていた。

もちろんそんな体験をしたのは初めてで、間違いなく歴史的な大ヒットになるであろう映画を公開初日に見れたことの幸せをかみしめていた。

 

その後、ブームがどんどん広がっていったのは、古参ファンとしてはものすごく嬉しかったし、友人たちと感想を言い合うのもすごく楽しかった。

興行収入がみるみる増えていき、最終的には250億円を超えるとんでもない歴史的大ヒット。

次回作のハードルがとんでもないことになっていそうだが、新海監督にはまた数年間じっくり練ってもらって、また素晴らしい作品を生み出して欲しい。

 

ということで、本編感想は終了。

3枚の特典ディスクについては別記事にて感想を書こうと思う。