腸壁を削って美味い物を食す

潰瘍性大腸炎持ちの筆者が、病状が悪化してでも食べたいと思う逸品(主に麺類)を思いつくままに紹介するブログです。

132. 出オチ(後編)

前編からの続き。

 

↓未読の方は先にこちらを。

kenshinkk.hatenablog.com

 

水曜日の中国出張報告会の冒頭にて、

あえて金曜日に行われる業務報告会のテンプレ挨拶をかまし、

上司の助けもあってなんとか笑いを取ることに成功し、

残すは金曜日の業務報告会本番だけとなった。

 

業務報告会の方は、審査されて順位付けもされるため、

笑いを取りに行く予定は全くなかった。

直属の部門長にも、

「次は審査されるから笑いを取りに行く必要ないぞ」

と釘を刺されていた。

 

でも、同僚や先輩の大半からは次のように言われていた。

 

「金曜日は『中国の報告をします』って言え」

 

たしかに、かなりの人がそれを期待してくれていたと思うし、

仮に自分が芸人ならそうしたかもしれない。

 

しかし、上司からくぎを刺されていたことに加え、

色んな人が審査をするから、今後の出世にも影響すると考えると、

これ以上ふざけるわけにはいかない。

ふざけたやつというイメージを定着させるわけにはいかない。

それに、業務報告会は、直前に上司が自分のことを紹介してくれる。

その紹介のあとにいきなりボケたら、紹介して頂いた上司にも失礼にあたる。

「ご紹介ありがとうございます」と上司に一礼を添えてから発表を開始する人も多く、

3年間お世話になった上司を裏切るわけにはいかないから、今度はちゃんとしよう。

ということで、ボケないことを決意して、当日の朝を迎えた。

 

午前中の発表では、4年目ということもあり厳しいディスカッションが続いた。

自分の発表順は午後の最初だったので、

午前中の厳かな雰囲気を感じて、

絶対ボケてはいけないと改めて心に誓った。

 

そんな中、午前中の発表者のうち、

なんと4人中3人が同じことで注意されるという珍事が起こった。

 

パワーポイントの最終頁「ご清聴ありがとうございます」の漢字が、

「ご静聴ありがとうございます」になっていたのである。

ご静聴→×

ご清聴→〇

たしかに、「静かに聴く」って感じもしなくもないので、間違えるのはわかる気もする。

 

昼休みはその話題で持ちきりだった。

慌てて自分の資料を確認し、漢字が合っていることを確認した。

幸い自分の資料は合っていて一安心。

でも、パソコンの変換機能に頼り切っていたところだったので、

いきなり書けと言われていたら「静」を書いてしまっていたかもしれない。

勉強足りてないなぁとしみじみ思いながら、軽い昼飯を食べて発表に備えていた。

 

発表練習も、質疑対策も、自分としてはできる限りのことをやり、

「あとはやるだけだ!」

と、ある意味すがすがしい心持ちで自分の席を立ったのは覚えている。

 

壇上に立ち、横で上司が自分の紹介をするのを聞きながら、

ボケることも全く頭に浮かばないくらい、自分の発表に集中していた。

上司の紹介も終わりに向かい、発表を始めるよう促され、マイクを手渡される。

スイッチを入れ、上司に紹介して頂いたことの礼を告げようと口を開いた。

次の瞬間、自分の口から発せられた言葉に、自分自身、耳を疑った。

 

 

 

 

「ご清聴ありがとうございます」

 

 

 

 

目の前が真っ白になった。

 

会場は割れんばかりの大爆笑。

10秒ほどは発表を再開することができなかった。

全員がそのあとに続く「中国出張の報告をします」というボケを待っている中、

完全に別のベクトルでの出オチ。

それも午前中の流れをしっかり汲んだ内容。

今度はツッコミは不要だった。

 

恥ずかしくて一刻でも早く立ち去りたかったが、そこから15分間まじめに発表をしなければならない。

でないと、これまでお世話して頂いた先輩方にも申し訳ないし、

何より、全力で業務に取り組んできた自分にも申し訳ない。

「出オチだけの人間になってたまるか。」

そんな気力だけで、なんとか発表を立て直した。

 

結果は11人中3位。

 

正直もう順位はどうでもよかった。 

一応、内容をちゃんと審査されての3位という評価であったとは思うけど、

印象だけを見れば完全に失言の方が上回ってしまった。 

上の方の人から掛けられる声は
「出オチだけで3位に入れて良かったな」
というものばかり。

完全にキワモノ扱いである。

 

ということで、全社的に失言キャラが定着してしまったわけで、

果たしてここからどうやって汚名返上を図っていけば良いのだろうか。

 

でも、たとえ失言キャラでも上層部に名前を売ることができたというのはプラスなのかな。

そう思うしかない。

 

以上、普段ボケ慣れてない人間が急にボケようとすると痛い目に合うよ、というお話でした。