ドラマ版、全11話、ようやく見れた。素晴らしかった。
2013年の作品をなぜ今頃になってから見たのかというと、単にタイミングを逃していただけである。
もともと有川浩さんの小説(図書館戦争など)が好きでよく読んでいて、
その原作のドラマだというからすごく見たかったわけだが、
原作がまだ文庫化されていなくて、その文庫化を待って原作を読んでからドラマ版を見ようと思っていた。
しかし、待てど暮らせど文庫版が発売されない。
結局発売されたのは2016年の4月である。
そのころは仕事がめちゃくちゃ忙しくて本を読むどころではなく、
開発が落ち着いてきた年末年始あたりにようやく原作小説を読み終わって、
しばらくしてからドラマも見てみようと思っていたら、こんな時期になってしまった。
見てしまった今としては、本当にもったいないことをした。と思っている。
これだけ面白い作品を今まで見ていなかったわけだから。
この作品は去年大フィーバーした「逃げ恥」と同じく、野木亜希子脚本×新垣結衣主演。
この組み合わせは間違いなく面白いということが分かった。
ちなみに掟上今日子の備忘録もこの組み合わせである。
実は、原作小説を読んだときは、正直言うと少々物足りない感じがあった。
あとがきでも指摘されている通り、糖分控えめでもあったし、ボリュームはある作品だけど、ドラマ11話持つような長さではないし、盛り上がりも無いわけではないけど、映画か前後編のSPドラマでもいいのでは?と正直思ってしまっていた。
でもそれは間違ってた。連続ドラマにして大正解。
リアルタイムで見たかったなー。
ここで少し内容を紹介しておく。
不慮の事故で夢を絶たれた元戦闘機パイロットの空井二尉(綾野剛)。異動した先の広報室にはひとくせもふたくせもある先輩たちが待ち構えていた。そしてその広報室に、美人TVディレクターの稲葉リカ(新垣結衣)が取材しにくる…
というのが導入部分。
序盤は、夢を絶たれたショックで立ち直れていない空井大祐とガツガツ失礼なことを言ってしまう稲葉(通称:稲ぴょん)が衝突するわけだけど、
柴田恭兵演じる鷺坂室長が間に入ってくれて、次第に打ち解けていく…。
そして、打ち解けてきてお互いの仕事もうまくいってきたところで事件が起きて…、
というストーリー。
(以降、原作とドラマの結末のネタバレあり)
ドラマ版では原作を生かしながら本当にうまく改変されていると思う。
ドラマならではの仕掛けでいえば、このドラマの時期設定。
原作が書き上げられたのが震災前で、出版されたのは2012年、ドラマは2013年放送。
そういえばドラマ1話でしきりに「2010年ですよ」アピールがなされていた。
鷺坂が稲ぴょんに渡した雑誌が2009年のもので、すかさず「去年のかよ」って突っ込みが入っているシーンである。
本来そこで異変に気づくべきだったが、放送された時期が2013年だというのをすっかり忘れていたため、てっきり放送時期自体が2010年なのかと勘違いしていた。
それに、鷺坂室長の退官についてのところでも、しきりにカレンダーを映していた。
自分はその場面でようやく「2011年の3月だ!」と気づいた。遅すぎる。
自衛隊は「平時」と「有事」で大きく活動が違うわけだが、
阪神淡路大震災のことを伏線として挙げながら、10話までは「平時」の広報官の仕事を面白く描きながら、11話ではしっかり有事のときのシビアな仕事についても描いている。
そして、原作でもあった「あの日の松島」をもとに、空井を松島基地に異動させ、
ドラマチックなラストに持って行っている。
とくにうまいなと思ったのは、1話では空井が稲ぴょんに頭を撫でられているが、最終回では全く逆の構図で撫で返すという形にしたこと。ここは本当にうまい改変だったなと思う。
原作では最後も空井が泣いて稲葉が慰める展開だったので、既視感があっていまいち盛り上がりに欠けたのを覚えている。
そして、ドラマ版はキャストが良かった。
とくに鷺坂さんのキャラが最高だった。
独特のジョークやアクションを交えたプレゼン力はさすがの一言。
自分は柴田恭兵さんという俳優をあまり知らなかったので、それが逆に良かったのかもしれないが、アクションと言いセリフ回しと言い、素晴らしかったと思う。
退官のシーンは本当にもらい泣きしそうになった。
送別会で稲ぴょんが撮りためたやつがムービーに使われたってのも良い。
あれだけ状況判断も早くて頼れて、普段コミカルで時には厳しい上司がほしいなあ。
脇を固める俳優陣も豪華豪華。
ムロツヨシのまじめな役(比嘉さん)もハマってたし、
要潤の残念なイケメン(片山さん)や水野美紀のおっさん女子(柚木さん)など、
キャラが立ってて、広報室のチーム感がすごく良かった。
あと、カメラマンの二人もよかった。
前野は「桐島部活やめるってよ」での名言「おまたー」を、逆に彼女に言われてたのが面白かった。これは明らかに桐島を見てた人へのサービスだと思う。
ゲストでいえば、桐谷健太演じるキリーかな。
10話でブルーインパルスにキリー(桐谷健太)を乗せるようにしたのは本当にすばらしい改変だと思う。
原作ではPVを取ったアイドルが乗っていたが、1話との関連性を考えるとキリーの方がだんぜん良い。
キリーのドラマがブレイクして、そのキリーが人気者になって番組でブルーインパルスに乗って、稲ぴょんが空井と再会するという一連の流れは素晴らしかった。
序盤での「いつか人気の俳優さんをブルーインパルスに乗せたい」→「それを2人で一緒に見る」と言っていた約束もかなったわけだし。
しかもそれであのハート形のひこうき雲を一緒に見ることで、それが最終話にも効いてくる。
ドラマを一気見するとそういう伏線がわかりやすくて良い。
そして、野木先生も有川先生も本当に描写がうまいし名言が多い。
望み通りの仕事に就けなかったところから立ち直るまでの過程が、
リカや空井を通じて丁寧に描かれていて感情移入してしまった。
メンバー全員が回を重ねるごとに成長していくのも良かった。
片山さんはラス前までダメダメだったけど、プロポーズうまくいってたし。
そして、一番心に残ったのはやっぱ鷺坂室長のラストの言葉かな。
「あの日から時計の針が止まってしまった人がたくさんいる。
…でも、それでも前に進もうとしている人達が…
前に進もうとしている人達が、たくさんいる。
勝手な願いだが、
俺はお前達に諦めてほしくない!」
この言葉を受けた直後に現れる例のひこうき雲、
それを見て走り出す空井とリカ、
道の途中で会って想いを告げあって結ばれることになるわけだけど、
その光景を鷺坂さんが写メとってて「結婚します」というメッセージ付きで拡散されてしまうというオチ付き。
いやー、良いラストだった。
最後に、
この本およびドラマを通して、自衛隊にも興味を少し持ったし、
これまで誤解していた部分が多々あったことがわかった。
そう思わせることが、まさにリアル鷺坂室長の思惑通りなわけで。
してやられた感がすごい。あくまで気持ちの良いしてやられた感。
原作本のあとがきで、この本を書こうとしたきっかけが、広報室室長の荒木さんから有川さんへのオファーだったというからビックリ。
そして、最初は航空自衛隊の小説を…というオファーを「広報室」の話にもっていくという有川さんのアイデア。脱帽です。
ということで、素晴らしい小説&ドラマでした。